大雪/天野茂典
東京は台風だった
8月1日 だが君は飛んできた
ぼくがちょっと遅刻した 君のジャンボ機の
おなかを見ながら 車で走っていったのだ
君は空港でぽつんと一人たっていた ごめんね
ぼくたちには時間がない 旭川空港をたつと
すぐ大雪山にむかった いまならまだ夕陽にまにあう
彼女は薬局で日焼け止めクリームをかった
彼女の肌は白いのだ 大雪山のロープウエイで
五合目までいった 彼女は狂喜した
『まだみんな働いているのね』
大雪山の山頂がまじかに見える
池がある 鐘が鳴る
シマリスのうぶげが逆光ににやさしく映える
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