ある春の夜に/ぎよ
春の夜 なまあたたかいベージュ色の空気がよどんでいる
デパートの遥か上空では昨日死んだキャバクラ嬢が踊り
孤独な酔っ払いは朝まで電柱と死闘をくりひろげる
なにも輝いていないしすべては腐敗していくので
私は気が滅入ってしまう
こんな日には百億光年彼方の宇宙のことを考えても始まらない
現実はあまりに惨めでけがれている
かつては超現実(シュルレアル)を生きた男や女もいたけれども
彼らはみな年老いて死んでいった
もう逃げ場所はない
地上にも 天上にも
救いの道は閉ざされた
我々はただただ涙から酒をつくり全てを忘れることだけを望む
偽造された希望がアヘンのように街々に氾濫している
しかし
絶望だけが真実であり絶望だけが存在する
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