非ガリバァー旅行記/石川敬大
 
 だれとも一言もしゃべらない
 この日の
 この状況を客観的に
 死と捉えるのであれば
 きょう一日は
 死んでいたのも同然だったかもしれない
 めざめたら小人の国というのは映画か小説のファンタジー
 ナレーションもなければBGМもながれない
 のが、夢とか現実で
 発熱した身体をもてあます日々が
 ベッドの上で淡々とつづく
 ゆられていた から ゆれていた
 時計盤上で脈打つ秒針
 この速度が
 乗った列車のスピードとリズム感
 車窓のスクリーンに
 街並みはたやすくタイムスリップするだろう
 ながいカゲをひいた犬が坂道をユタユタ
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