春の数え方/mizu K
 


わたしは森の中にいるようだ
ときには幹の表皮をかけあがり
ときには維管束の中をかけめぐり
ときには分解者として仕事をこなし
ときには苔の羽毛に正体をなくし
ときには朝露のひとたまになって
しずかに消える
だがいつしかわたしはまた森の中にいることに気づく
腐葉土をしっとりと踏んで立っている
わたしが誰であるのかよく知らない
もう、しばらく森の外に出たことがない

足もとを見る
文字のかけらが散乱している
胞子を飛ばして見る間に消えていくものがいる
まだあたらしい葉、ふるい葉、ほそい枝、ふとい枝
それらが幾重にも繊細に組み上げられて階層を形づくり
その奇跡的に
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