ジャッキー・チェン/はだいろ
 
とうとう、
再来年発行されるという、
10万円札に印刷される肖像は、
ジャッキー・チェンに決まったらしい。
ぼくはむずむずと興奮してしまったので、
体育館の友達のところへ駆けて行って、
酔拳ごっこに明け暮れようと思った。


そしたら仲違いした、
友達のひとりがぼくのところへやってきて、
実は、
ボクは十六年後、バイク事故で死ぬんだけれど、
いま走馬灯のように記憶がフラッシュバックしている最中で、
どうしてもきみに言いたかったのは、
きみのカンニングを先生に言いつけたのは、ボクじゃないよってこと。
そう一遍にしゃべり抜くと、
友達はまた、つかつかと歩き去って行った。
そんなことが気になって、
きみは遠い未来から、
死ぬ間際に、こんな体育館まで、やってきたのかい。


ぼくはちょっと泣きそうだった。
どうせ10万円札なんて、大人しか持てないんだから、
6円玉でも造ってくれたらいいのに。
そしたら、
友達に、最後にあげることもできたのになあ。
さようなら、
ジャッキー・チェンによろしくね。
きっと会いに行くよね。




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