アナルの奥の町/真山義一郎
の呟きには
マルボロの優しさがあり
僕らは二人
静かにコーヒーを飲む
少し気のふれた女が踊っている
その女は徐々に闇を増し
そのうちに完全に
影となり
電柱に消えた
ああ、
と彼は
苦しそうに息を吐いた
そう、
もう二度とその街から
逃れることはできないから
自由は渇望のまま
大きなため息になるしかない
老いるしかないのか
僕は問う
無論、返事はどこからも聞こえず
ただ、将来、住むであろう
あの炭鉱の長屋で
僕はジャック・ロンドンを
読んでいたらしい
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