深い森/さき
黄ばんだ細い幹の先
辛うじて育む古の緑
枯れ切らない生が
美しい朝を
美しい夜を
何度も
心待ちにしている
如何わしいことばかりの森の奥で
白いワンピースの裾が揺れていた
小鹿の目をした少女
そのしなやかな手足に惑わされる夢
こんな時ですら
私は迷いの子
神が与えた不可解なプログラム
こんなにも「完全」に憧れ続けているのに
「完全」には永久に辿りつかない
少なくともこの回帰線上には
見当たらない
「邪魔だね」と聞こえた
誰かが捨てた
革紐のサンダル
不自然だよと教えてくれた
そもそも
全てが自然の一部
不自然なことも
きっとそのうち
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