ぼんやり/殿岡秀秋
 
電車
降りる駅の看板が動きだす

見る
睫毛の間に雨粒の影

晴れ
瓦屋根の隙間から雀がでてくる

気配
振りかえると自分の影

授業
突然教師がさしてくる

歩行
つまずく手の平に地球がせまる

映画
以前観たことに途中で気づいて肩を落とす

会話
鼻で返事していると妻が不機嫌になる

精算
つり銭が少ないが店まで戻る気になれない

閃き
メモ帳を探すあいだに忘れてしまう

半眼
瞑想ではなくて寝ている

人の気持ち
わかったときには別の電車に乗っている

未来
見えていないのに死ぬことは知っている










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