赤鼠、白狐 ver. 2/mizu K
 
火に踊っていたのに、な、ぴくりとも動かない、あはは、ああ、そうだ、あれはねずみだから、ははは、彼らの笑っている理由を、わたしは知らない、し、ひとびとの傾斜する笑顔はどれもうつくしい

はたしてこの雨は、はしはしと耳するこの雨は、天蓋のむかう空に手向けて、ひかれるように降り上っているのか、はしはしと感情もなく落ちて、顔をたたいているのか判然とせず、不明瞭なかたちに口を、ほ、と開けてほうけてしまった、その混濁して川原に倒れたすがた、極彩色の夜空とにじんでいくその花の輪、かすかに動く血ぬけてかじかむ左手をかざしていたらば、すうと何かがよこぎり、ふたたび視界がかげり、声はぼやけて遠くへ去り、ああ、死ぬのか、と思ったが、先の、ただ大勢のひとびとが、声もなく、音もなく、叫びもなく、悲鳴もなく、崩落もなく、瓦解もなく、橋からはらはらと転げ落ちて、とめどもなく、とめどもなく、とどまりもなく、ただ星のように降ってくるのであった




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