赤鼠、白狐 ver. 2/mizu K
 


あまつぶ音のぽつぽつと頬にあたってくだけ流れるので、となりの人はそれを涙だと勘違いしてたいそう驚いている、驟雨がいっときたたきつけて去っていくと、雲の端は信じられないほどに光にあふれている、わたしたちの真下は依然として、くらい、くらい、だがまたきたよ、またあいつだ、そういわれて見上げると、どしゃぶりがまたくる、音もなく、粒音が耳のうしろからうなじをすっとなぜて背中のすきまに入りこんでなぞりまた腰をすうとさらっていったような感覚、かんかく、かんかくだけがして背筋はおろか心臓も胃も腸壁もあごのつけねもぞくぞくとする、みぞおちを圧して花火が打ち上がる、音もなく

その日は数年にいちどの大祭で
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