顔のないひと/三奈
その人には顔がなかった
ゆっくりと動く喉仏
見なくても分かる 嗤っている
高い位置から嗤っている
私の苦手な目をして
私の苦手な言葉を紡いでいる
その人には顔がなかった
顔なんていらなかった
見たくもなかった
だから消した
その目も 鼻も 口も
私はあなたをおばけにした
私はあなたをかおなしにした
だからもう大丈夫
次逢った時は その喉仏に
最上級の愛想笑いをプレゼントしよう
顔のない人も きっと嘲笑ってくれるでしょう
いつものように
鼻を鳴らしながら
戻る 編 削 Point(20)