有視界飛行/木屋 亞万
初めて空を飛んだ日
私に帰る場所はなかった
指示をくれる人もいなければ
計器も灯台もなかった
頼れるのは私だけ
飛行機が
機械の身体になって
両腕よりも遥かに長い翼で
私を空へと運んでくれた
進路に雲はほとんどなく
太陽がとてもまぶしかった
自分の視界の遥か下まで
空が勢力を伸ばしてきて
飛んでいることを実感する
働きアリよりも遥かに小さい
ミジンコのような人間たちは
私のことを指差しているだろうか
鳥になろうとした人間の
天使のように自由な飛行を
ちゃんと眺めているだろうか
厳しい風が頬を打つ
見慣れない客への手荒な歓迎
風防はまだ凶暴
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