語らい/電灯虫
 
言われた方はよく憶えているように
一方的に別れさせられた彼の方がよく憶えているだろう。
きっかけは何だった?
彼に問われるのが怖くて。


関節は滑らかに動いていて、立派になった彼の振る舞いが年月を感じた。
大きくなったな、そう声をかけられ
どうも、と無愛想に答え、
大人をアピールしている自分の成長度合いに恥ずかしくなった。
白髪混じりの自分の風体にどっかで引け目を感じる。


年齢に即して見合った振る舞いを、誰ともなく、いつの間にか要求され
見えない境界線から半歩でも足を出さないために
成長と名をつけて答えなきゃならなかった。
個性を重視するという売り込みの割には
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