夜行/yumekyo
あの子にもらった 最初のメール
携帯電話を鞄の奥深くに沈めて
鞄を膝の上で固く抱きかかえて
午後十一時過ぎの 快速列車にもたれる
子供の頃に
家族みんなで大阪で遊んだときの
帰りの新幹線を思い出す
暗闇に 眠りかかった街がぼんやりと現れては消え
僅かに灯る光が帯になって飛び交う
宇宙を疾走する銀河鉄道に乗ったようだ
田舎には売っていない玩具を膝小僧に抱えて
胸の沸き踊るまま
車窓に釘付けになっていた
行きつけの居酒屋で軽く飲んで
淡海(おうみ)から続く上り坂をふたり歩く
歩幅の小さなあの子にあわせながら
顔は通りの果ての稜
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