幽霊/智鶴
絶望からは少し違う此処で
頭を垂れてぽつりと咲いた
誰にも気付かれないような色で
僕にも気付かれないような色で
普通すぎる僕にはあまりにも
それは不気味で心地よい季節だった
夢を見ながら歩くことも
影を背負って旅することも出来なかった
僕は君とは違う
壊れた時計と同じように
錆び付いた鉄格子に縋りついて
凍ったように動けないんだ
月の色をしたその花に
慟哭することで変われると思った
鉛色と虹色と
水平線の陽射しを浴びて
僕は本当は幽霊だった
頭を垂れて雨を待つだけ
出来ることなんて何一つないよ
だって僕は幽霊だから
君に許されることさえも
瞳に
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