おねしょ/小川 葉
 


一年生になった息子が
おねしょした

小学校には
楽しそうに通ってるけど
子供は子供なりに
新しい環境に緊張してるようだ

昨年
死んだばかりの父も
あの世でゆっくり
休んでるのかと思ったら

それは違うと
春風に乗って便りが届いた

たくさんの
亡くなった魂に
今は死を説くことに
忙しいのだと言う

そのことを理解させると
あなたは苦しまずに
逝ってよかったね
と言われる
そのことが辛いのだと言う

涙を流す
からだがあったなら
と父が笑う

涙の代わりに
おねしょしてくれてるのだなと
孫に語りかける

おねしょとは
生きるかなしみであり
生きるプライド

だから息子よ
人は生きる
そのときが美しい

そして父よ
美しかったと言える
その日まで

布団に描かれた
世界地図が
こんなにも美しい


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