埋める/寒雪
 
ようやく決心がついた
顔に無数のしわが出来るほど
髪に無数の白髪が生えるほど
それくらいの時間をかけて
ようやくそうしようと思った


裏庭にシャベルで
出来るだけ大きく
土を掘り返してみる
自分の体が三つくらい
入りそうな穴を前に
少しだけ祈りを捧げて
それからおもむろに
穴の中に
かつて心の中で
激しく燃やしていた
情熱だとか
願望だとか
今となってはすっかり
燃えカスになってしまった
若かった頃の気持ちを
次々と投げ入れて
ためらう暇を
感じないようなスピードで
穴を埋めた



土の中で眠るのは
かつていた自分の亡霊
それを埋めてしまうことで
ようやく次の道を
目指すための
心の隙間を手に入れた
無駄な時間だったとは
思わないことにする

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