薄紅のかけら/atsuchan69
始原の時を想わせる煌めく土や眩しい空の濃さが生々しく匂いたち、
かけらは、怖ろしく深い渓谷を穏やかな春に渦巻くつよい風にはこばれて渡る
その惨く美しい花の乱舞を無邪気に、遠くパノラマに見渡して
接合部に錆のでた白いガードレールに右足の黄色いスニーカーを乗せると
膝を直角にまげ、片腕をのせた格好でしばらくの間そこを離れなかった
だからといって、どうこうするわけではなくて
たぶん大丈夫…
大丈夫、大丈夫 大丈夫
きっと大丈夫
ダメだったらもう笑えるはずないし
大丈夫、大丈夫。
たのしい明日はかならず来るよ
傍らに停めた車のフロントガラスに一枚、そしてもう一枚
この辺りではまだ微量の、憎しみを帯びたサクラの花びらが付着している
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