春に酔う/石川敬大
 
 川面で光の魚がはねている
 春と霞を点描で描くのはぼくではない
 土手の並木の樹勢のなかを
 グングンふくらみ育ってゆくもの
 ふくらみみもだえて勢いを増してゆくもの
 樹幹で吸いあげる
 水分は
 ツブツブの泡になるやまいである
 一種のシャボンとして七色に輝く
 あわい綿毛の微風が
 痛んだからだをやさしくつつみこんでくる
 ふるふる ふる、ふるえる
 パチン
 と、はじけとぶ
 ネコがひとつ大きな欠伸をした
 赤くかわいい舌がのぞいた
 ひかりに触れるとハレーションをおこす
 川面は一面の白銀である
 ( 滞る ことで
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