聖域/salco
それでも自発呼吸で頑張り抜いて逝った
私達の祈りは
この上なく真摯だったが、非力ゆえに子を守れなかった
人の生命力、若い脳組織の回復力に望みをつないだ医療も
実質的に担当医の祈りであった1時間の心臓マッサージも
奪還の力にならなかった
伯母の教祖やユターは言うだろうか
何らかの霊的素因が、見えた運命の確定要素に介入したのだろう、と
私達が回復を信じたのは、それを最も信じたかったからだ
それしか策がなかった、ただそれだけの事だ
当時は、
恋愛も知らずに死んだ彼が哀れでならなかったが
今は、手段としての言葉を最小限しか持たぬ子が坩堝に投げ込まれ
他人の靴底を舐めるよう
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