天晴れなエイプリル/小池房枝
 
は誰も居らぬと/詩人は


地獄にもさくら極楽にもさくら

満開のアンブローシア八重桜
 
春されば速贄もはや花の中

蓑虫をまとめて隣家の隅におく

雨の日のレイラインゆくライラレン

アスファルト境いに噴出するスミレ

花腐し花の豆腐が出来さうな

春の氷雨さくらを抱いてみたくって

 
ゆずり葉の春はらはらと散る葉音

雨水吐累々花の堆積層

春寒し準急はるひ野駅通過

花筏オタマジャクシの群れの屋根

花びらが点描してくアスファルト

シリウスを一番星に八重桜

暮れ残る空青い空暮れてからも

十重二十重八重の桜の峰に月
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