D.A.Harold's brain/田無
も言葉では言い表せない。
殺人犯の頭の中とはあんな感じなのだろうか。
あの腐敗臭。耐えられない。とても。
とある夜、振られた男が女の住むマンションに忍び込み、
すべての暴行を行使した後で、命を握りつぶした光景…。
とある午後、群衆の中に飛び込み、
何十人もの人たちの人生を一瞬で終わらせた光景…。
もうよくわからない。
とにかくこの世の全ての悪意が、
まるで俺自身の経験であるかのように俺の脳裏を駆け巡った。
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あれからもう1週間が経つ。
ハロルドは、また来る、と俺に言った。
マンションの鍵を変えたり、警察に通報することが
無駄だということは、何故かはっきりと理解している。
俺の精神は、この先持ちこたえられるのだろうか。
ハロルドはこうも言った。
人間の精神ほど不安定で不完全な構成要素はない、と。
私は君で、君は私だ、と。
俺は、あの耐えられない悪意の光景と同時に見た、
まるで天国のような小川のほとりの風景を思い出していた。
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