子どものレクイエム/アヤメ
 

ジェット機に乗ってそれはやってくる

音に染まってくたびれたヒマワリ

ちぎったサルビア アリの巣の大洪水

限りない荒野に 軟禁されたことを知る

道端に命を落とした蝉の自由な羽


時に全てを知っている幼子

低い目線が近くとも遠くとも揺れて

宇宙をうかがい知る


自分の中に自分は一人いる

うさぎに草を与えれば自分の中には二人いる

足をもがれたバッタを 足の生えたオタマジャクシが

労っている 労わっている 二本の足を手持無沙汰にして


歌声に乗ってそれはやってくる

空色になったあの時のモンシロチョウ

指先に 海と空に愛されたこの孤独を残し


歌う 最後の旋律

叫ぶ 二度目の産声

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