誕生歌/小川 葉
 


なまえのない
はながさいている

そのとなりにも
はな

ことばなくして
よりそっている

はるがきたのだ
ただそれだけ

しずかに
さあ、しずかに





ふるさとのはるを
わたしはしらない

わすれてしまったから

けど
おぼえている

うまれたころなら





いとしいひとよ
ありがとう

と、いえる
そのひまで

うまれたひを
いわいましょう

そのひまで
かわいいいもうと





あなたのおかげで
しじんになれました

まどをあけると
そんなこえがきこえます

こえはなくても
ことばがなくても

わたしという
しじんがここに





としおいた
たいぼくが

わたしに
いいます

ねをたやさずに
えだをそだてて

みあげるわたしは
四十二さいになりました


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