アパートの彼方に/番田 
 

私は部屋の中に何もなかった
人のいない景色を出て行った そうして
不確かな夢の中に落ちていった


何もない 絵の中を 誰かと 私は歩いていった
つまらないイメージを 夢の中で 書き進めながら
流れていく その絵の中で
見たのだろう そのタッチの中を


私はどんなことがあっても 楽しかった
誰かの言葉を 聞いていたかった


本屋の中で いつも なんとなく 孤独を抱えながら
人から流れ出された大きなざわめきに合わせて
眠っていたかっただけなのだ その夢の端のどこかで


思いの終わりの尽きたところで
その絵を 私は見つめていたかった
いつも 私は 見つめていたかっただけなのかもしれない


私は 白い絵の具を一人で 握った
命の尽きてゆく その部屋の中で
そして 笑顔を 他の誰かと交わすこともなく
私は いつも 見つめていたかった
人の絵にしなかった 風景を いつも



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