19g、21g/プテラノドン
一年前、ロシアでは火力発電所の煙から
金を採取する技術開発に成功した。
―その量、石炭一トンから12グラム。
雷鳴が遠のき、
昼になると雨が上がった。
来館者の多くは街へ出ていった。
図書館員の女は
書庫のひねた紙の匂いと
くすんだ蛍光灯の光を浴びて
しかめ面をしながら
おびただしい数の本の整理に臨む。
籠の中を覗き込んでは
ラベルに記された番号を、
まじないのように小声で口にしながら
周りに誰もいないというのに
足音にも気を配りながら歩いている。
本棚に移す前の手にした本を
慣れた様子でパラパラ捲って
愛情を示す言葉を探す。
或いは、消えつつある語彙と
それらの表現を駆使したならば、今よりましな
地形が現れるのかもしれない。と、考える。
そして、天井の薄い上の階の書庫では
もう一人の図書館員が作業している。
二つの足音が同時に止まる。
「こんなもんを読んで、
何の役に立つの!」
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