春のひととき/番田
一体何を見たのだろう
捨て去られたものたちが輝いている
確かではなかった 何もかもが
海面を見つめた 水の上に無数に砕け散る
電車のつり革の隅にぶら下がると
今日も知らなかった役目を演じさせられた
誰だったのだろう 私は
ぼんやりと 切なさを抱えさせられた
すべてが労働であるのなら 何でもないことを
誰もいない日の消えていく光に見た気がした
何一つとして 持たないまま ひとり
何一つとして 持たないまま私は出かけた
何も知らない場所まで
駆けて行く 私は 走るべき場所など無くして
海のあるであろう所まで
自分であることなど 忘れながら
そして眠る
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