「春について」/青井とり
 

私は、春という季節が少し苦手なのだと思います。
何故か、春になると、漠然とした不安を覚えます。
澄んだ空の下に立つと、柔らかな日差しを浴びると、居心地の悪さを感じます。
カーテンから部屋へと溢れ出す春の朝は、大抵私を憂鬱にします。
慣れてしまえば、何てことはない。
それでも、あまい夢から醒めたばかりの私は本当に弱いので、いつも少し、戸惑ってしまうのです。

そして、春が来ると、何か新しいことを始めなくてはならないような、そんな気がします。
「お前は変わらなくてはいけない。」――
そう誰かに急かされているようです。

変わるためには、頭から爪先まで、土踏まずから耳の裏まで、
[次のページ]
戻る   Point(2)