誤想/蒼木りん
傷つけてきたものは何だった
知るのが怖くて触れもせず
通り過ぎた
傷つける気はなかったから
何も言わずに
風になろうとした
汚名はいつまでも
挽回されることはなく
夕日は紅く紅く沈み落ち
今日も暮れた
その藍色の空は
白い鷺にも黒い烏にも易しい
あの空だけだ
恥るものがないのは
ちくちくと汚点は痛い
ぜんぶ集めて蓋をする
無かったことには出来ないのさ
何度でも記憶装置は作動する
認めるには遅すぎる
でも切腹するわけにもいかないね
そうだな
こんなときには
勉強に没頭するしか
手がない
そうだろう
私を知るのは私だけ
自惚れ鏡を見れば
いつもどこにも醜さはない
他人に愛はないのさ
情けは重たいから
余計な欲もないのさ
傷つけるなんて
そんなリスクは負いかねる
懐には
今日と明日生きるだけのお金
あなた
私のどこを見てるのさ
戻る 編 削 Point(1)