slide away / ****'99〜'03/小野 一縷
ざらざらに 荒れ果てた氷原を きみは
惰性で 滑走しようとする意思を
瞬き絶えて濁り始めた水晶体で
ぎらぎらと 乱反射させている
己の無力さに 体内の血小板達が 絶望するのを よそに
ああ
置き去りにされた 滑らかな煙の軌跡
ナメクジの足跡が 真昼の雪融け水の 溜まりの上に
七色の放射線を 滲ませている
悲しくはない 涙ぐんでいるのは
焼けてゆく 角膜のせい
ぼくの 涙目を 見ても
それでも きみは 行くんだね
「さようなら」
彼方に きみは
こぼれた 涙の 一滴より 小さくなって
ぼくが 失明するより先に 見えなくなった
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