Electric Last Moment(エレクトリック・ラスト・モーメント)/木屋 亞万
車が燃えている
クラクションを響かせて
さよならの時だ
出棺のように
天国へ召されていく
車に墓はないけれど
廃車になって
プレスされ
溶かされるか
埋め立てられるか
家族のように時を過ごしたが
うちの墓に入れるわけにはいかない
それはペットだって同じだ
ペットの葬式はしてやれるが
別の墓を立てるのが関の山
車の葬式をしたかったのに
拾う骨は残らずに
金属の焦げた骨組みが
がっしり燃えずに残ったままだ
光り輝く流れ星のように
溶けてなくなることもできずに
無念だったろう
仕事を終えた星のように
爆発できなくて
悔しいだろう
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