卒業式/西日 茜
 
いつものように 教室までの階段を
タンタンと駆けあがってくる君の足音を聴いたとき
先に来て 私物を整理していた私の心臓が急に高鳴った
ポッと頬が染まったろうと客観的に感じた
客観的にというのは
つまり その後の喪失感を考えないようにすることで
聴き慣れた音や作業がずっと続くと錯覚し
体内の血液や体温やホルモンに変化がないこと
ついに来てしまった最後の日は
そんな感じで恒常性を帯びて始まり
それから何時間かはいつもの冗談で笑い合って過ごした
作業ははかどった
教室のちゃちなプレーヤーにipodを無理やりつなぎ
DMCとかRIHANNAとかのお気に入りの
R&Bもろもろをシ
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