大満月/salco
 
裳裾は月光の見せたあやかしだつた。
月光とは無論、アポロの反射だが。アツハツハ! 
ダヰアナなぞ居らぬのさ。近づいて見ればおまへ、それは一面痘痕でセ
メント色の陰鬱な屍だつたのだ。
水の痕跡の無い海底の漆黒と、有機物の痕跡が無い静寂の堆積でしかな
い。
かうして踵の先は墓場なのが知れたもので、爾来は碧青の砦を離れずに、
その周回軌道上にマルスのチヤリオツトを配備する事にしたわけさ。

仰らないで、そんな未来を塞ぐやうな事。
息が詰まりさう。
夢ぐらゐ見たつて好いぢやありませんか。せめて頭の中だけでも何処か
…。

(ふむ、女は此れだからな。帰ると云つたら愁嘆場か知らん。俺は疾う
に、此奴の柔過ぎる丘陵なぞ食傷だよ)

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