走れ、走り続ける。/ブライアン
 
 冷たい風。乾いた空気。日向だけを暖める太陽。坂を上る。陸上競技場が見える。後ろを振り向けば、町が一望できるだろう。その奥に微かに海の青い色がぼやけながら移っているはずだ。
 風が正面から吹く。前へ進もうとする体が思うように動かない。周囲の林や競技場の建物が、高台からの景色をさえぎっていた。苦しかった。深く息が出来ない。なんで走っているのだろう、と疑問が湧き出る。向かい風に足を止めてしまおう、と思う。遠くから女性の声が聞こえてくる。タイムを読み上げる声。おそらく、前を走る走者のタイムだろう。定点で他校の女子マネージャーは声を張り上げる。目の前を走り去る走者に向けて、タイムを伝える。20分21秒、
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