思慕/水瀬游
夜の帳も落ちた頃
明日の朝も早いと言うのに
目が冴えてしまって仕方がないのは
来るはずの無い貴方を待ちわびて居るからだろう
私の居る場所も知らない貴方が
私の名前すら知らない貴方が
いつかここに来るのだと
私の居場所など知るはずもない
私の名前など知るはずもない
ましてや私がここで待っている事など!
だけど貴方は 私のそれ以外を誰よりもよく知って居る
この 醜いという言葉で形容するのも憚られる
赤黒い心臓の全貌と その粘性の内容物を!
この口から止め処なく流れ出る ヘドロのような言葉を
恍惚の表情で眺める貴方のなんと美しいことか!
だからこそ
私の首を掴む貴方の手が 氷点下のように冷たくても
私は安心して貴方に身を委ねられるのだ
貴方が私を刈り取りに
いつかここに来るのだと
夜の帳も落ちた頃
冴えた脳髄で
夢を見る
戻る 編 削 Point(0)