レイトショー/寒雪
近所の映画館
レイトショーに一人
暗闇の中
映像で明らむスクリーンを
ひたすら二つの目で
半時間前には眠かったことを
すっかり忘れて
目の前で
ぼくの何十倍もの大きさな
きみの泣き顔が
悲しくささやく言葉に
ふと周囲を見回す
見える範囲で
画面に食い入る顔顔顔
映画は終わる
タイトルロールと共に
立ち上がる人々
囁きが津波のように
ぼくの足元から上ってくる
ライトで照らされた場内
立ち去っていく人々を
見下ろしながら
映画の感想を語るべき
誰かがいないことに
少しだけ後悔して席を立った
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