視野/
小川 葉
もう少し
視野を広く持ちたくて
川の土手で写生していた
目の前を一頭の牛が通り過ぎて行く
あれを描けばよかったのに
川の土手で都会の高層ビルを描いていた
そこで暮らす自分の姿を
見えない世界として描いていた
それが今現実のものとなっている
目の前を通り過ぎて行く
あの一頭の牛を描けばよかったのに
あの牛はもう生きてさえないだろう
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