星の手触り/電灯虫
 
星の手触りがあるのなら

それは闇夜で繰り広げる光へのランデブー。

真昼の光線よりも恭しいから,すぐにでもできそうに

指先で感じる努力。


星の手触りがあるのなら

それは眼で愛でる星へのモノローグ。

眠りに誘う母の語りで聞かされていたようにはっきりと形を取っていないけど

絵本で描かれる魔法陣をそこに現したくて

上瞼で興じる視線の演舞。


星の手触りがあるのなら

それは言葉で刻む星までの航海日誌

誰にも見せないことにかこつけて

信号機の三色に似せた,文字と振動のモールス信号

硬い真空でも伝える言葉の頑張り。


星の手触りがあるのなら

眼を瞑って暗闇で浮かべる想いの通信

宇宙学校だって教えない気持ちは

天文学的時間旅行

違いを超える想いの潜在力。


むずがるように,星が一度や二度,瞬き。

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