生きてない、死んでない。/うんち
 
力もいらなくて楽だ。
----
部屋に戻ると、そんな形を成して生きていられる、今自分の座る不格好だが温かい木製の椅子を
愛しく贅沢そうに撫でる。けれどこの世に一つしか生産されなかったその椅子の事を可哀相にも思ってみた。

このしかくい部屋から母に電話を繋げてみてもよかった。けれどそうせずあっけらかんと眠ってしまう。
次の朝目を覚ます時に、私の身体とベッドと枕と布団だけが真実味もなく浮いていた。
そしてそこからはただくっきりとした白色の出窓からあどけない柴犬のぱちくりとした目が小さく見えていた。
本当は少し前に背のひょろりと高い緑色の男がおいていった空き瓶から日にちの立ち過ぎたうさんくさい匂いがしていたのに


それを自分の中に入れない。

《かな〜り過去作です》
戻る   Point(3)