雨降り/向 奨吾
 
枕元をつつく 小さな唄は
屋根に注がれる 滴の仕業で
霞んでいく内側は
靄の色に染まっていた

劣情の欠片はハンマーで押しつぶし
青年の思い出は埃を払って棚へ

綺麗に整頓していれば
やがて窓から聞こえる 唄

目を閉じて
暗闇の下で そっと呟く
輪郭のない言葉たちが
冷たい頬を染めていき
雨粒は街中を沈めていく

坂道を駆け下り
屋根樋を伝い
アスファルトを染め

あやふやな世界を
全部洗い流して

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