宇宙は膨張している/わたしのなかの/小川 葉
 


ふと目覚めた枕もとに
思い出がきていた

いつなのか
だれのものなのか
わからないのだけれど
波の音が聞こえる

思い出の持ち主がいないので
尋ねることもできず
わたしはただ
波の音を聞いていた

美しいものだけが
思い出とは限らない
かなしい思い出も
今はあんなにかがやいて

二十光年の彼方
まだ若くて美しいまま
あの海辺にいる

あなたが今も
枕もとで
わたしを待っている気がして


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