表層雪崩/hossy
意思をもたず
閉じることもなくただ嵌め込まれている
しなやかな鱗
なめらかな頭
そこにはただ
危うい生命がただ光っている
つり革越しに眺めている私は
自身こそが閉ざされた中にいることを忘れている
危うく冷たく光るその塊は
去りゆくジュラルミンの車体に隠され
西日に燃える町を貫いていく
抱え込まれた黒ずんだひとつの粒子
それこそが私なのだ
横顔たちの中に美しい女を捜していた
それは自身を確認したいくだない衝動だった
その残像も
水平な雪崩を前にして
黄色い光に吸い込まれ
意味を持たない眼球になる
彼らと自身の間の境界は消え
同じものになっていくのだ
次の駅
閉ざされた暑気の中へ
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