猪の仔/朧月
うちにうりぼうがきた
祖父が猟師から安値で買ってきた
うりぼうはかわいくて
姉と私はこっそり
うり うり と呼んでは
かわいがっていた
うりぼうは決して私たちの
声に喜びはしなかった
ある日の朝に
飼っていた猟犬が
噛み殺して吠えていたのだ
誇らしげに尾をたてて
焼いたり煮たりの
食材になったうりぼうをみて
私は泣いた
おいしいという姉を裏切り者とおもったが
祖父の 食えという一言でかき消されてしまった
祖母は 供養という
だから食べなさいと
その夜の祖母の念仏は
いつもより長かった
うりぼうはどこいった
うりぼうのいたおりは
祖父の手によっていつのまにか
薪になっていた
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