太陽が見ている/寒雪
 


色鮮やかに陽光の筆が
街並みを描いていく
様々な悲しみや苦しみが
色づいて人々にのしかかることを
受け入れるのだと気付きながら
それでも力を緩めることもなく
すべてを受容する覚悟を持って
太陽は一日を回し始める
その下でぼくたちは
始まりに安堵してもすぐに
待ち受ける障害の高さに
反吐が出るほど辟易しながら
零れたミルクを戻すことも出来ずに
血の色にも似た
風の涙を全身に浴びて
無駄だとは思っていても
コートの襟を必要以上に立てて
生活の厳しさに足元を
すくわれないように
ぼろぼろの革靴でアスファルトを
しっかり踏みしめて歩く


自分が立ち止まるたび
歩みを速めて進むたび
何気なく空を見るたび
目の前に現れる
ぼくたちの亡霊やポルターガイスト
疲れて眠ろうとする彼らを
受け入れる様を
地表はるかかなたから
鋭いまなざしをぼくらに向けながら
太陽が見ている
好むと好まざると
ぼくらはその視線に負けることなく
すべてを受け入れて歩いていくしかない
それが生きることだと信じて

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