三月/小川 葉
 


二月が去っていく
たくさんの雪をのこして
さよならも言わずに
故郷で雪がとける頃
今月もまた
生かしてくれてありがとうと
ひとり暮らす母が言う
下げた頭をあげる頃
そこに三月が来ている
こんにちは
生きてくれてありがとう
三月が母に言う
父によく似たその声で


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