影/こしごえ
 




私は、
有形の門を通りすぎ透けた暗さ
届かぬところへしみる幽かな終止符
行方知れずの墓
墓標は名無しの波止場
船は無人で行き交う汽笛
宙をつかんだこぶしをひらいて
手をふりつづける 永さ
私の時は、その光にみつめられている

限り無く終わりつらなる
ささやきに耳をかたむければ
丸い水平に直立する石造りの
時計台はしろがねの鐘を鳴らす
ひんやりとかたい産声の響く晴空へ
黒く大きい蝶がしのびやかに消えていった

ふりかえり帰りつくことの出来ない夜空
時は、待ってはくれない。
林の陰の道にある
水たまりに映っている影に
しずくは落ちて 落ちて

[次のページ]
戻る   Point(5)