影/こしごえ
私は、
有形の門を通りすぎ透けた暗さ
届かぬところへしみる幽かな終止符
行方知れずの墓
墓標は名無しの波止場
船は無人で行き交う汽笛
宙をつかんだこぶしをひらいて
手をふりつづける 永さ
私の時は、その光にみつめられている
限り無く終わりつらなる
ささやきに耳をかたむければ
丸い水平に直立する石造りの
時計台はしろがねの鐘を鳴らす
ひんやりとかたい産声の響く晴空へ
黒く大きい蝶がしのびやかに消えていった
ふりかえり帰りつくことの出来ない夜空
時は、待ってはくれない。
林の陰の道にある
水たまりに映っている影に
しずくは落ちて 落ちて
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