夜/向 奨吾
 
君は見ただろうか

無限の空白を吸い込んで
膨らみ 掠れる 闇

戯れに歪んでみせた数直線は
誰の目に留まることもなく
いびつな形をよじらせる
ホルマリン漬けの瓶の中

影の記憶が道を照らす
悠久の予言を追いかけた その先
神経質なチシャ猫の 引っ掻き傷が
世界を定義する
そこでは
太陽も昇らないのだ

薄っぺらな闇の中で
直線は直線でしかなく
猫はいつまでも 猫

海底のような夜の下
輪郭の揺らぐ瞬間を見たくて
君は目を細める

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