トラウム/関口 ベティ
 
counting dead bodies like rams to the rhythm of the war bells. 
汝見過ごすこと無かれよ 
憂きものの坩堝 
この平坦な砂礫をこの虎を 
肺に流砂を抱き込んで 
息もつけぬと咽ぶ日に 
最早気付かであるべきか 
地平の向こう 
宝と思い込むパノラマの夢 
見遣れ、佇む母は涙に暮れ 
届かぬことを知っている 
war by the war 
わたくしは丘に立ち 
あの日もひたに 
世の終わりを待っていた 
告げる霧の匂いに寄せて走る海原 
子等は死体を数え 
苗床のように寝転がる 
やがて来る静寂の夜に 
喧しく銅鑼を叩き続けるは妥当 
若葉燃ゆ若葉燃ゆ 
宛ても無くまた 
この羽根は爛れ彷徨うのだ 
こぼれる一滴 
焦がす他に平癒を知らない次の獣へ 
嗚呼またも百足這う腕を示し 
袋小路の楽園を稲妻で導く定めよ 
君よ何故知らなかった 
負った暗きの 
その深みをもっと 恐れるべきだったのだ!
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