猫と俺/田園
 
物を飼っている住人がいる。
さて、とまた呆ける。
唐突に無職になった。
金、入らなくなった。
このブサイクな猫と俺。
どうすればいいだろうか。
考えをチラシ裏に書いてみるが、どう足掻いても三十路を過ぎてわりと経ってる男を雇う会社は、そう無い様に思う。
その間、親から金を貰わねば…貯金を切り崩しても無理かも知れぬ。
こういう事なら、貯金をもっと本気でするべきだった。
親父か。
嘆息した。
俺はまだ若い頃、粋がって親父との中が最悪と言っていい程悪くなった。
勘当同然で家を出て、昨日までいた会社に入ったのだが。
不況の波はここまで来たのだな。
「仕方がない」
その言葉のみ浮かんだ。
猫は…もう逃してやろうか…。この面なら確実に保健所行き、はいさよなら。
俺も、身一つ残っただけの男。
ホームレスと言う言葉がよぎり、あぁ、欠伸が出た。
就活をしようか。
というかそれ以外の道は無い。
俺と猫。
外は嫌味な位、晴天。
なるようにしかならねえな…。
そう心で呟いて、猫を引き寄せ、喉を撫でた。


戻る   Point(1)