雨/寒雪
 


草原に降り始める雨
傘のない子供たちのため
世界に向けてそっと差し出す
そんな素振りで
行き場を失った
すっかり冷えて
寒さに震えるぼくたちの
気持ちを凍えさせたくなくて
きみは手のひらを
遠慮がちに頭上に掲げてみる
刺々しい言葉の数々が
手のひらの上で
小さく粒になって
忘れかけた優しさを
取り戻そうと控えめに踊る


わたしたちは
いったいどれだけの
傷ついたうそと
傷つけたほんとを
手のひらの上で
もてあそんできたのかしら


きみはおもむろに
受け止めたしずくを
重力の任せるままに
地面にしたたらせる
それは弾けて飛んで
消えてなくなった
今までに捨ててきた
ぼくたちの忘れかけた
セピア色の思い出みたいに


雨脚が強くなるのを
受け入れるように
両足をしっかりと踏みしめて
体全体で
すべてを受け止める
雲は灰色のままで
地上のぼくらを
悲しく見つめていた

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